射撃と眼

射撃では照準が大切です。射手が標的をしっかりと安定して見えていれば、正確な照準ができ、射手の競技力は向上します。

射撃では正確な照準ができるようにいろいろな要素を整えなければなりません。

照準とは

照準では標的と銃のフロントサイト(照星)、リアサイト(照門)を同一線上に合わせて、銃を標的の方に向ける作業です。

照準

照準は目の能力だけでなく、射手の呼吸、心拍、筋肉の緊張など身体からの影響も受けます。

照準と目

正確な照準をするには、目では視力、ピント調節、瞬き、涙、目の位置を整えることが大切です。

1.視力 

射手は視力がよくても屈折異常(遠視・近視・乱視)があると標的がクリアに見えていません。

適切な視力矯正で視力を向上させれば、しっかりと標的が見えるようになります。

2.ピント調節

射手は照準をするとき、標的、照門、照星にピントを合わせています。

この作業は、毛様体筋を動かして水晶体の厚さることで行ないます。そのため、毛様体筋や水晶体には大きな負担がかかります。

ピント調節は、自律神経が反射的に行っていて、調節は内蔵の筋肉(心筋を除く)と同じ平滑筋である毛様体が行っています。

したがって、ピント調節は目のトレーニングでは鍛えられません。

目のトレーニングによって体調が悪くなる人もいることから、安易に行うべきではありません。

3.瞬き 

瞬きは無意識に約0.3秒と短時間で起こるまぶたの開閉で、1分間に15~20回無意識に行っています。

瞬きの頻度は集中力が高くなると少なくなり、緊張や不安感で多くなるように、瞬きは心理状態で変化します。

4.涙

涙は角膜の表面に均一な膜を作って、視力を安定させます。

涙の分泌は瞬きのときに起こるので、ドライアイの人や瞬きを長時間しない状態が続くと、角膜の表面は乾いて均一な膜ができなくなるので見えにくくなります。

したがって、射撃のように長時間見続ける競技では、涙の状態は競技力に大きな影響を与えます。

涙は感染を防ぐ、酸素やビタミンを供給するなどの役割もあります。

5.目の位置

標的をしっかり捉えられるには、標的が見えるように顔の位置を合わせて、視線を安定させることが重要です。

しかし、ピストル射撃は身体を標的から横に向けて、顔だけを標的に向けていることから、首や腕の筋肉が疲労すると、照準の正確度は低下します。

また、ライフル射撃は顔を銃に固定するので顔は若干右下方向に傾いて、目は左上方に固定された状態が長く続くと、目の筋肉は疲労して照準の正確度は低下します。

The Rifle Sports参考
射手から見た照準 (例:ライフル射撃の照準)

The Rifle Sports から引用

   

照準の方法

照準を片目だけで行うと、閉じた目のまぶたに起こった緊張が照準をする目に影響します。

また、視力やピント調節機能は片目よりも両目で見る方が良いことから、標的は両目で見て、照準をしない目は遮閉板を使のが良いと思います。

利き目は視覚情報を処理するのに優れた目であると考えられていて、優位眼(マスターアイ)ともいわれます。

スポーツでは利き目を考えてプレイをすると良い成績が得られるといわれていますが、利き目がはっきりしていない人や利き目が状況で変わる人もいることから、スポーツにおける利き目の優位性ははっきりわかっていません。

射撃では利き目よりも利き手を優先させた方が良いと思われます。

 

着弾点のずれ   

射撃では照準と着弾点がずれる場合があります。

着弾点のずれは、引き金を引くと決断した時に見えている標的と引き金を引いた時に見えている標的のずれで起こると考えられます。

これは、引き金を引くことを決断した時から引き金を引くまでの時間が約0.3~0.4秒かかるので、その間の呼吸、心拍、筋肉の緊張などの影響が銃の揺れに影響するために起こります。

また、目の不調、銃の傾き、メンタルなどが原因でも起こります。

このように射撃では様々な要素が関係しているので、正確な射撃をするにはこれらの要素を考えて行わなければなりません。

「スポーツにとっての視力の大切さ」について
プロスポーツ選手・有識者との特別対談を行いました