プロサッカー選手、伊野波 雅彦さんとの対談「サッカーにとっての視力の大切さ」

この度は、現役プロサッカー選手・元日本代表の伊野波 雅彦さんに、プロサッカー選手の観点から、「サッカー競技にとっての目の大切さ」についてお話をお伺いいたします。枝川先生にはスポーツ眼科医の視点からお話をお伺いしますので、よろしくお願いいたします。

まず、最初にえだがわ眼科に来られたきっかけから教えて頂けますでしょうか?

枝川院長

受診されたのは2022年の6月ごろでしたね。

伊野波選手

練習でシュートブロックに入った時に、視野に入ってないところから飛んできたボールが目に当たって、視野が完全に真っ白になりました。その時にトレーナーさんからスポーツ眼科の枝川先生を紹介して頂いたのが出会いです。

僕もプロ生活17年の中で、ボールが顔や目に当たった経験はあったのですが、今回はいつもと違って視野が完全に真っ白になった感じが続いたので、片目が見えなくなるような怖さがあって枝川眼科を受診しました。

枝川院長

練習中に目にケガをされて、改めてプロサッカー選手として目の大事さに気づかれたということですね。

伊野波雅彦さん

そうですね!今回の怪我がなければ、改めて目の重要性に気づかなかったかもしれません。サッカー選手にとって目のケガはとても危険だと思いました。

プロサッカー選手として、スポーツ眼科へ通院されていて安心感はありましたか?

伊野波雅彦さん

サッカーでは筋肉のケガが多く、その場合はMRI撮影や診察の後に、ドクターからケガの治療や復帰するまでのトレーニングメニューが出されます。

目のケガもありますが、ひどくない限り眼科を受診することはありません。しかし、今回のようなひどい目のケガをしてしまった際には、スポーツ眼科の専門医がいる事は、とても心強いです。

枝川眼科では、スポーツ選手がケガをした時はどのようなことに気をつけて診察していますか?

枝川院長

私は、「アスリートの目の問題を解決して、アスリートがより良い環境で競技ができるように手助けする」という、スポーツ眼科を提唱しています。

したがって、スポーツでケガをした選手の治療、選手が競技に復帰するまでのケア、選手が競技でパフォーマンスを十分に発揮できるような視力矯正など、選手の目がより良い状態で競技ができるようになることを考えて診察をしています。

サッカー競技では、以前にJ1からJ3までのJリーグチームのドクターが集まる会で講演をさせて頂きました。その時は多くのドクターから選手の目のことについて様々な質問があって、プロサッカーチームでも目で困っている選手が多くいることを実感しました。

サッカー競技にとっては、「スポーツ眼科」が必要だと思います。

伊野波雅彦さん

そうですね。

スポーツでは視力が良いことが大切だと思いますが、サッカーでは視力は大切ですか?

伊野波雅彦さん

僕は視力が良いのですが、今回のケガで片目の視力が低下したときに、「体のバランス感覚は思っていたより目で行っている」と気づき、視力はとても重要であることがわかりました。

したがって、視力の悪い選手が視力をよくすると、バランス感覚は良くなり、パフォーマンスが上がるのではないかと思います。

とくに、子どもは成長期なので運動能力の伸びしろが大きいことから、子どもの頃から視力の状態を注意することは必要だと思います。

しかし最近は、子どもの視力は悪くなっている傾向もありますので、サッカーの現場でも視力の悪化でパフォーマンスが低下している子どもが多くなっているのではないかな?と感じています。

枝川先生は、小中高の学生や大学生の選手、プロ選手、オリンピックや日本代表選手まで、幅広くスポーツ選手を診療されていますが、選手の視力のことで気づいたことはありますか?

枝川院長

高いレベルで活躍している選手が、必ずしも視力に注意を払っているとは限りません。視力が悪くてもそのまま気にせずにプレーをしている選手がいます。

しかし、プレーでは困っていないからといって、それで良いわけではありません。

シビアな競技の世界でパフォーマンスを十分に発揮するには、視力を良くする必要があります。

視力の良くなった選手は、視力が悪かったときに比べてボールや人の動き、周辺の状況をすばやく知ることができ、状況に応じて的確に身体を動かせるようになります。

その結果、競技中でもプレーに余裕が生まれて、パフォーマンスは良くなることが多いです。特に、サッカーや野球といった球技ではその傾向が強いといえます。

伊野波選手はサッカー練習の時に、目に関連したトレーニングなどは行っていましたか?

伊野波雅彦さん

僕は高校生くらいからサッカーの練習中に走りながら、「木がどこに何本あるか数える」といったことをしていました。

体を動かしながら、また体が疲れた時に、周りのことをよく観察するという練習は、今思えばサッカーという競技において大事な練習をしていたと思います。

プロサッカー選手がプレー中にボールや選手の動きを見る感覚は、普通の方とはやはり違うように思います。

プロサッカー選手がを目指すような子ども達は、小さい頃から「見る」ことに高い意識を持って、練習してくれたらたらよいと思います。

枝川院長

そうですね。本格的なトレーニングを開始した子供達も、スポーツ眼科を受診することで、「視力に対する意識」が変わってくれればよいと思います。

伊野波雅彦さん

私も目をケガするまでは、サッカーにおける目の重要性をあまり感じてはいませんでした。

プロサッカー選手の立場からも、スポーツ眼科の重要性をもっと発信をしていく必要があるのかなと思います。

枝川院長

スポーツ選手の目を専門的に診ている眼科の先生は、実際はほとんどいません。

私は長年にわたり、国立スポーツ科学センターや私のクリニック等で、様々なレベルの選手を診察してきました。

その経験を生かして、私のクリニックでは一般眼科とともにスポーツ眼科という専門的な診療を行っています。

スポーツ眼科はスポーツ医学の観点から、さまざまな競技の選手の、それぞれのスタイルに合った、選手のパフォーマンスを十分に発揮させられる視力矯正や眼のケア、スポーツ外傷治療などを行なっています。

目について気になるスポーツ選手の方がいらっしゃいましたら、一度当院へおこしください。また、監督やコーチの方々はチームとしてもご相談ください。

伊野波雅彦さん

プロサッカーチームでも、目の検査を含めた本格的なメディカルチェックは年に1回くらいしかやっていません。

また、目の検査は簡単なものだけなので、もっと詳しくチェックを行っていく必要があると思います。

最近、選手の目に対するケアの考え方は変わってきていると思います。サッカーでも目の重要性は、これからますます認識されていくと思います。

今回の怪我は、自分でも本当に目の重要性を知らされた怪我でしたが、スポーツ眼科を受診することでサッカーにおける目の大切さを知ったこと、色々と気づかされた部分があったことは、良かったと思います。

枝川院長

人間が取り入れる情報の多くは目から入っていると言われていることから、目はスポーツにとって大切な役割をしています。

プロ・アマ・学生問わず、スポーツ選手の方は検査から自分の目の状態を把握して、競技の時に十分なパフォーマンスを発揮できるように目の状態を整えることを心掛けてください。

本日は、プロサッカー選手である伊野波選手から、サッカーにおける目の大切さについてお話をお伺いすることが出来ました。ありがとうございました。

伊野波 雅彦 
MASAHIKO INOHA
https://twitter.com/inoha19

【プロフィール】プロサッカー選手。関東サッカーリーグ1部・南葛SC所属。 ポジションはディフェンダー(CB、SB)、ミッドフィールダー(ボランチ)。元日本代表。

【経歴 】宮崎東サッカースポーツ少年団-宮崎市立生目台中学校-鹿児島実業高等学校-阪南大学-FC東京-鹿島アントラーズ-ハイデュク・スプリト(クロアチア)-ヴィッセル神戸-ジュビロ磐田-ヴィッセル神戸-横浜FC-南葛SC所属