元プロ野球選手、宮本慎也さんとの対談「野球にとっての視力の大切さ」

この度は、宮本慎也さんに、プロ野球の観点から、「競技にとっての目の大切さ」についてお話をお伺いいたします。枝川先生にはスポーツ眼科医の視点からお話をお伺いしますので、よろしくお願いいたします。
まず、枝川先生と宮本さんの出会いのきっかけについてお話し頂きたいです。

枝川院長

最初の出会いは、宮本さんが1997年にナゴヤドームで、内野手と交錯して脳震盪で倒れ、「モノが2重に見える」ということでした。

宮本慎也さん

そうですね。プロ野球選手になって3年目で、本当に野球ができなくなるのではないか?と思うほどした。

枝川院長

あの時は、見にくくなったために毎週様子を見させていただきました。

宮本慎也さん

それからはずっと定期検診と、コンタクトレンズによる視力矯正をして頂いています。スポーツ眼科ならではのアドバイスも色々と頂いています。

宮本さんは、子どもの野球の指導をしている中で、目や視力について思うことはありますか?

宮本慎也さん

今の子どもたちの多くはスマホやゲームをするためか、視力の悪い子が多いですね。

野球などの球技ではボールをしっかりと捉えなければならないので、目は悪くない方がいいですね。

ゲーム時間を決めるなどして目を大事にして欲しいです。

枝川院長

そうですね。最近、プロ野球でプレーをしているときに、スポーツ眼鏡をかけている選手も増えています。

主に視力の矯正のためですが、目のケガの防止にも役立っています。

宮本慎也さん

目を守ることはとても大事です。ティーバッティングの横にいると危ないことも多いです。

中学校でも頭にヘルメットを被らせるなどしていますが、子供の頃からケガの対策は大事ですね。

バッティング練習でもスポーツ眼鏡をかけて保護する練習環境が整えばよいですね。

枝川院長

学生のスポーツ外傷の後遺症についての調査があります。その調査では、後遺症の中で最も多い部位は目で、球技で起こることが多いようです。

野球ではバッティングのときに、自打球のファールボールが目に向かって飛んでくることがあります。

このとき、バットに当たってから目に当たるまでの時間は0.05秒ほどしかなく、人がモノを認識するのに必要な時間の0.1秒よりも短いのです。

したがって、私たちは、目に向かって飛んでくるファールボールを避けるということは不可能です。

宮本慎也さん

練習中でも、「ボールが出てくるところはきちんと見ておきなさい、バッティング練習中でも背中を向けないで!」とよく言われますが、そうは言っても難しいです...。

枝川院長

目は後遺症が残ると、競技だけでなくその後の生活まで困ることになります。

したがって、スポーツ眼鏡で目を守るということは大切です。

宮本慎也さん

そうですね。本当に大切だと思います。

最近は紫外線対策についてもよく言われていますよね?海外でも小さい時からサングラスがいいと言われていますし。

枝川院長

はい、紫外線対策もとても大事です。子どもは安全にスポーツができる環境として、スポーツ眼鏡をかけさせてあげることは推奨したいです。

プロ野球選手ならではの、視力についての意識やトレーニングについてもお話をお伺いしたいです。

枝川院長

よく見えていることが当たり前!と考えられているとは思いますが。

宮本慎也さん

これまでも枝川先生とは色々お話をさせてもらいましたよね。

私は内野手だったので、いつもボールをすばやく捉えないといけないので、視力は本当に大事でした。

打席でもピッチャーが投げたボールがバッターに届くのは0.4~0.5秒数しかないので、はっきりとボールが見えていないと打つことができません。

枝川院長

しかし、プロ野球選手でも、視力が低いにもかかわらず高度なプレーをしている方も沢山いますね。

宮本慎也さん

私も最初は、社会人の時に視力が落ちていたことを知らずにやっていました。

プロに入る前の身体検査で視力が0.6や0.7だったので、最初は眼鏡をかけました。アマチュアの時には、ナイターでは少し見づらいなという感覚だったのですが、毎日がその景色なので見えづらいとは思わなかったのです。

プロに入って眼鏡やコンタクトをした時に、みんなはこんなに見えていたんだ!ずるいなと思ったほどです。

自分ではなかなか気づかないんですよね!

枝川院長

プロ選手でも、「ボールの落とし方が変だ」とか、「バットがボールと離れて振っている」とコーチにから言われて、診察に来られたというケースがあります。

宮本慎也さん

それなら、空振りが多い人は一度眼科で診てもらった方がよいかもしれませんね?

枝川院長

そうですね。視力が良いからといっても、プレーでは目がベストの状態であるとはいえません。

選手の中には日によってボールが良く見える日と見えない日がある選手、長時間の試合になるとボールが見にくくなるような選手がいます。

宮本慎也さん

当てはまる人がいますね!アドバイスしてあげようかな?

枝川院長

これは目のピント調節能力が安定していないときに起こります。

目のピント調節能力をよくしようと考えて、目のトレーニングをする選手もいますが、それをすると見やすくなるどころか逆に気分が悪くなることがあります。

宮本慎也さん

みんな最近はそのようなトレーニングをよくしていますね。

枝川院長

目のピント合わせは平滑筋という筋肉と、自律神経という神経が行っています。これらはトレーニングしても鍛えることはできません。

目のトレーニングは安易に行なわないほうがいいと思います。眼科医に相談してください。

宮本慎也さん

広めた方がいい話ですね。視力で変わる人はいますか?

枝川院長

いると思います。視力が悪いにもかかわらずプロ野球選手になった方は、卓越した技能や身体能力があることから、自分の見え方がよくないことがわかりにくいのだと思います。

このような選手は視力を良くすることで速い動きにも対応ができるようになり、さらに高い競技技能が得られると思います。

プロ・アマ問わず、スポーツ選手にとっては、視力のケアも重要ですよね?

枝川院長

宮本さんは野球において、視力や目のケアなどで気になることはありますか?

宮本慎也さん

スポーツをしているときは集中力を上げて見ているので、目の疲れもおそらく通常とは違うと思います。

目を休ませることはとても大事なのではないですか?

枝川院長

そうですね。目の疲れは目や体の疲れ、加齢などで起こります。

上手く打てていたバッターが、目や体の疲れや加齢で見えづらくなって打てなくなることもあります。

宮本慎也さん

そんなに空振りして、目が悪くなったのかな?とか冗談で言うときはあります。

変わっていく自分の体を知ることも大事ですね。

基本的にみんなが考えるのは筋力や関節など頭から下の部分だけですが、野球選手は目も耳もケアは大事ですよ。

枝川院長

野球選手では体は試合後に冷やすなどケアをしていますが、目のケアは何もしていない人がほとんどではないかと思います。

宮本慎也さん

視力のケアはどうやってするのですか?

枝川院長

近視・乱視・遠視などの屈折状態を整えて視力を良い状態に保つことも大切ですが、積極的に目を休ませることも、視力を保つためには大切です。

宮本慎也さん

目を休ませるというのはどういうことですか?
あまり使わないということですか?

枝川院長

目は近くをずっと見ていると疲れます。

したがって、スマホやタブレットなどを見る時間を少なくすることや、遠方の風景を見る時間を多くすることが大切です。

試合や練習で目を使った後に、目を温めるような目のケアをすることも良いと思います。

また、視力が目や体の疲れや年齢などで変化すると、選手がボールを捉えるタイミングが変わり、バッティングのフォームが崩れる原因になることもあると思います。

宮本慎也さん

プロになると試合中心の生活で、なかなか病院へ行けないこともありますが、少なくともシーズンオフに1回検診をしてみるのは大事だと思いました。

アマチュアの選手は時間も取れるでしょうし、若いころからスポーツ眼科の存在を知っているとよいですね。

枝川院長

はい。プロ・アマ問わずスポーツ選手には、是非スポーツ眼科の存在を知って頂きたいですね。

本日は、プロ野球の観点から、「競技にとっての目の大切さ」についてお話をお伺いすることが出来ました。ありがとうございました。

宮本 慎也
SHINYA MIYAMOTO

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【プロフィール】元プロ野球選手(内野手)、プロ野球コーチ。元日本プロ野球選手会会長。野球解説者。スポーツ評論家。

【経歴 】現役時代は一貫して、ヤクルトスワローズ→東京ヤクルトスワローズに在籍。アテネオリンピック野球日本代表(2004年)・北京オリンピック野球日本代表(2008年)ではキャプテンを務め、2009年から現役最終年の2013年までは、一軍打撃コーチも兼務。2014年からは、日刊スポーツの野球評論家やNHKの野球解説者として活動し、2018年と2019年は東京ヤクルトスワローズの一軍ヘッドコーチに就任。