格闘技の選手はすばやく相手の動きを見極め、攻撃や防御を行なうために目はとても重要です。
しかし、格闘技はほかの競技と違って顔面への攻撃があるにもかかわらず、選手は競技中に目を守る装具をつけられません。
格闘技の種類と目のケガ
格闘技には、ボクシング・キックボクシングのような打撃系の競技と、柔道やレスリングのような非打撃系の競技があります。
打撃系の競技は顔面をパンチやキックで攻撃されることから、目のケガが多くて衝撃も強い。
打撃系の競技では、パンチ攻撃によるボクシングは網膜剥離や眼窩底骨折が多く、パンチよりも指や肘打ちが多いMMA(mixed martial arts :総合格闘技)では角膜のケガが多い。
また、パンチ攻撃だけでなく肘打ち、膝蹴りやキック攻撃のあるキックボクシング・ムエタイでは、網膜剥離や眼窩底骨折が多い。
しかし、柔道・レスリングのような非打撃系の競技ではパンチやキックの攻撃による顔面への攻撃がないことから、重症な目のケガは少ないのですが、指による角膜のケガが多い。

目がケガをしたときの症状
格闘技で目がケガをすると、視力の低下、視野の異常、ぼやけ、痛み、複視(物がだぶって見える)、目の動きが悪い、飛蚊症(視界に黒い影が見える)、光視症(光が走る感覚)などの症状があります。
格闘技でよくみられる目のケガ
1.瞼の擦過傷・裂傷
グローブや指で瞼に擦過傷や裂傷が起こると、瞼の腫れや痛み、出血が起こります。
2.角膜損傷(角膜裂傷・角膜びらん)
グローブや指で角膜に擦過が起こると、視力低下、痛み、異物感、ぼやけ、涙の増加が起こります。
3.網膜剥離
パンチやキックで目が強い衝撃を受けると、視力低下、飛蚊症、光視症が起こります。放置すると見えなくなる可能性があります。
4.前房出血・硝子体出血・眼底出血
目が衝撃を受けると眼内に出血が起こり、視力が低下します。
5.眼窩底骨折
パンチ、キック、肘打ちで、眼の周囲の腫れ、視力低下、ぼやけ、複視、目の動きの異常が起こります。
目のケガを減らす
目のケガを減らすには、目のケガを予防することが大切です。
そのためには、練習や試合での眼のケガの予防と、定期的な目の検査をしてください。
練習中の目のケガを減らすには、ヘッドギアやプロテクターのような目を守るための防具を使用することや、目や顔面への打撲が少なくなるようにヘッドムーブメントやブロッキングなど様々な防御技術を磨くことが大切です。
また、指を開いた手で顔面を攻撃しないようにすると、指による目のケガを減らすことができます 。
目の検査は症状がなくても、練習や試合後に必ず受けるようにしてください。
とくに試合で目に多くの攻撃を受けた後や選手が見え方に異常を感じるときは、なるべく早く目の検査を受けてください。
また、目のケガは痛みの強さとケガの重症度が一致しないことがあるので、選手の症状だけで判断するとケガが見過ごされることになります。
詳しい目の検査を受けてください。
目のケガによっては放置しておくと短期間に病気が進行して、手術をしても視力の低下や視野が欠けるなどの症状が残ることもありますので注意してください。



「スポーツにとっての視力の大切さ」について
プロスポーツ選手・有識者との特別対談を行いました