スポーツ眼外傷

スポーツによる目のケガについて

目は日常生活の情報の8割を取り入れているといわれています。

しかし、目はケガに弱く、後遺症によって見えなくなることもあります。

見えなくなった人は生涯十分な情報が得られず、ハンディを負って仕事や日常生活をしなければならなくなります。

状況

わが国では毎年多く人がスポーツで目にケガをしています。

学生が学校で起こったケガについて、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JAPAN SPORT COUNCIL略してJSC)が、幼稚園児から小学生、中学生、高校生、高等専門学校生までを対象とした調査資料を発表しています。

その資料では、目のケガは学校では例年約7万件起こっていて、そのなかの約4割にあたる約3万件がスポーツで起こっています。

学校における眼外傷とスポーツ眼外傷の推移

独立行政法人日本スポーツ振興センター資料
例年7万件くらいの目のケガが起こっていて、その中の3万件がスポーツよる眼のケガです



そして、中高生のケガだけでみると、その8割がスポーツによるものです。

学校における眼外傷とスポーツ眼外傷の推移(中学校・高校生)

※独立行政法人日本スポーツ振興センター資料
中高生では、眼のケガの約8割スポーツによるものです

原因

目のケガは約8割がボールで起こっていて、残りの2割は身体・器具との衝撃、塵や埃や風による乾燥、紫外線、塩素や化学物質で起こっています。

1.衝撃

ケガのひどさは、ボールの大きさ(ボールの直径)とボールが目に当たったときの強さで決まります。

小さなボール(ソフトボール・野球ボール・テニスボール・ゴルフボール・卓球ボール)や指が当たると、目の前部にある角膜・結膜・虹彩・隅角・水晶体が主に傷つきます。

目の前部のケガ

目の前部のケガでみられる病気
角膜:角膜裂傷・びまん性表層性角膜炎・角膜擦過傷
結膜:結膜裂傷・細菌性結膜炎
虹彩や隅角:虹彩断裂・瞳孔散大・前房出血・隅角後退・隅角離断
水晶体:水晶体亜脱臼・外傷性白内障

また、大きなボール(バスケットボール・サッカーボール・ドッジボール・バレーボール・ハンドボール)や肘が当たると、目の周りの骨が骨折することがあります。

また、目の後部へも強い力が働き、Aのように全体が水平・垂直・前後方向に縮んだり伸びたりして眼球が揺さぶられたり、Bのように当たった部分とその反対側の網膜・脈絡膜が傷つきます。

目の後部のケガ

目の後部のケガでみられる病気
硝子体出血
網膜:網膜剥離・網膜震盪・黄斑円孔
脈絡膜:脈絡膜剥離

2.紫外線 

太陽光に含まれる紫外線の一部(UVBとUVA)は、目に有害な影響を与えます。

紫外線によって目には急性と慢性の傷害が起こります。急性の傷害では紫外線角膜炎(雪眼)(写真1)、結膜充血(写真2)が起こり、慢性の傷害では瞼裂斑(写真3)、翼状片、(写真4)白内障が起こります(写真5)。

わが国では屋外で長時間プレーする選手は紫外線による瞼裂斑が多くみられるとの報告があります。紫外線を多く浴びる屋外や高所や海でプレーをする選手は紫外線に気をつけてください。

写真1紫外線角膜炎(雪眼)

写真2結膜充血

写真3 – 瞼裂斑

写真4 – 翼状片

写真5 – 白内障


わが国では屋外で長時間プレーする選手は紫外線による瞼裂斑が多くみられるとの報告があります。紫外線を多く浴びる屋外や高所や海でプレーをする選手は紫外線に気をつけてください。

重度の目のケガ

JSCでは、学校の中でスポーツによるケガによって重度の障害が残った児童・生徒に障害見舞金の給付を
しています。

最近の10年間では障害見舞金の給付がもっとも多かったのは目で、全体の約3割を占めています。目のケガは危険であることがわかります。

学校における重度障害が残った部位

独立行政法人日本スポーツ振興センター資料
重度障害が残った部位で一番多かった部位は目です



また、重度の障害が残った競技の、約9割が球技で、野球、サッカー・フットサル、バトミントン、ソフトボール、バスケットボールが多い。

学校における重度スポーツ眼外傷の競技種目

重度障害が残った競技のほとんどは球技です 

目のケガへの対応

スポーツによる眼のケガでは、その予防との応急処置が大切です。

目のケガが起こったときの大対応と現場の応急処置のポイントについては、スポーツ振興センターの災害共済給付Webの事故防止のところの「スポーツ事故防止ハンドブック」、「スポーツ事故対応ハンドブック」に詳しく書かれています。

また、動画集のなかの「目の外傷」の所では動画で詳しく説明されていますので、参考にしてください。
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/tabid/520/Default.aspx

「スポーツにとっての視力の大切さ」について
プロスポーツ選手・有識者との特別対談を行いました