1.フレイルとは
私たちの心身は年齢とともに、健康→プレフレイル→フレイル→要介護と弱まってきます。
日本老年医学会は、このような年齢による心身が弱くなる状態を「フレイル」と提唱しています。
2.目の病気とフレイル
フレイルと目の病気とは、さまざま関係があると報告されています。
例えば、白内障は歩行速度・握力・最大呼気量、緑内障では転倒リスク、加齢性黄斑変性症は認知機能と関連するとの報告があります。
3. アイフレイルとは
健康な目を持つ人も、いずれ加齢に伴って目の構造や機能に変化が起こって、見る力が衰えてきます。
そして、見る力がさらに衰えると、身体に影響して自立機能低下や日常生活制限を伴うようになり、健康寿命の短縮につながります。
このように、加齢によって目の健康が徐々に衰えていく状態を、「アイ(eye=目)」と「フレイル(frail=虚弱)」を組み合わせて、眼科では「アイフレイル」と提唱しています。
また、「アイフレイル」は、目の病気(白内障や緑内障、加齢黄斑変性)、生活習慣(食事、運動不足、紫外線、喫煙など)などによるさまざまな原因で起こる見る力の低下も含んでいます(図1)。
図1 アイフレイルの概念

アイフレイルは加齢、目の病気、生活習慣で起こり、健康寿命と関係する
4.日常生活制限の原因になる目の病気
身体のフレイルでは身体活動量や移動機能が低下します。
アイフレイルでは歩行速度や階段を昇降する速度が低下します。
日常生活の制限における人口寄与危険割合(もし特定のリスクの要因がなかったら、疾病発生が何%減少するかの割合)の報告では、1位が腰痛症、2位が関節症、3位が目の病気となり、目の病気は日常生活の制限に大きく関連していることがわかっています(図-2)。
図2 日常生活の制限における人口寄与危険割合

眼・視覚障害は日常生活の制限と関係する病気の3位です
また、日本における介護が必要になった原因の8番目は視覚・聴覚障害です。
他の原因が視覚障害も関連していることを考えると、「アイフレイル」は見る力の低下だけでなく、「フレイル」も悪化させて健康寿命康を短縮させています(図3)。
図3 介護が必要になる病気

介護が必要になった原因の8番目が視覚・聴覚障害です
5.高齢者の転倒と視覚障害
米国/英国の老年医学会と米国の整形外科学会からは、視覚障害があると転倒するリスクが2.5倍に増加すると報告されています(図4)。
図4 転倒の危険因子

また、視力の低下は転倒・大腿骨頸部骨折を増加させることや、視力が0.5未満の人は、日常生活で必要な動作や社会活動の能力が低下する報告もあります。
日本では年間に高齢者の5.4%が2回以上の転倒を経験していますが、視力が良くなると転倒の割合が20%減少するとの報告があります。
このように、多くの研究から視力と転倒とは関連することが明らかになっています。
6. アイフレイルの予防と対策
アイフレイルはさまざまな病気と関連があるので、アイフレイルを防ぐ必要があります。
そのためには、日常生活のなかで次のような目を守る習慣をつけてください。
① 目に良い栄養素を意識して摂ること
② 外出時はUVカットサングラスや帽子を着用して、紫外線対策をすること
➂ 適度な運動や肩こりを改善し、目の疲れを軽減させること
④ スマホやPCを長時間の使用を避け、休憩をいれて目を休ませること
⑤ 定期的に目の検診を受け、異変を感じたら眼科を早めに受診すること
⑥適切なメガネ・コンタクトレンズを使用すること
7. アイフレイルの自己チェック
皆様がアイフレイルになっているかを判断できる自己チェック表が、日本眼科啓発会議から出されています(図5)。
図5 アイフレイル自己チェック

日本眼科啓発会議 アイフレイル・ガイドブックから抜粋


「スポーツにとっての視力の大切さ」について
プロスポーツ選手・有識者との特別対談を行いました